unlimited blue text archive

マリア様がみてる:福沢祐巳に対する評価

作成年月日
2009年01月19日 00:00

序文


この忙しい時にマリみて原作全巻読破なんて、「パラソルをさして」から引用するなら「あなたおかしいんじゃないですか」という一年のスタートを切ってしまったわけだが、どうにも酷い有様なので例によって自分の好きな物を褒め殺して溜飲を下げようと思う。ここまで出てきた単語で解説が必要な方は以下の表を参照されたい。

「マリみて」
集英社から出版されているコバルト文庫「マリア様がみてる(著:今野緒雪)」シリーズの略称。「私立リリアン女学園」というカトリック系の女子校が舞台で、そこの高等部に在籍する「福沢祐巳」という生徒が、この高等部独自の「姉妹(スール)」制度を足掛かりに校内を掌握して行くいう、言わば女子校版『課長島耕作』。
「パラソルをさして」
「マリア様がみてる」シリーズ第11巻「マリア様がみてるパラソルをさして」。「あなたおかしいんじゃないですか」は31ページ目に書かれた主人公のモノローグ。
どうにも酷い有様
夢の中にドリルが出て来る

ここまでどっぷり嵌まってしまったのは、主人公である福沢祐巳の人物造形に原因がある。いや、それはつまり作者である今野緒雪の老獪さにしてやられたと言うべきか。「百合物」とか「ライトノベル」とか、そういう括りを取り払ってもこんなに成長の跡がはっきりと見え、尚且つその終着点が慎重に計算、隠蔽された主人公にはそうそうお目にかかれない、と思うのだ。今からこの少女が高校一年時から三年生になるまでの約2年でどの位成長したのか、という事と、その過程で一貫してぶれなかった彼女の最大の美点について考察しようと思うのだが、福沢祐巳の懐の広さが尋常では無い為に、どこから書き始めれば良いのか迷ってしまう位である。

何はともあれ、まずはオーソドックスに時系列に沿って彼女の人となりを追って行こうと思うのだが、ここで大切な注意事項が2点ある。

ネタバレに関しては言わずもがなである。原作未読でいつか読もうと思っている人は、この先の文章を読んではいけない。また、登場人物の心情や評価については、あくまで私個人の主観であり、どんなに断定的な口調で書いていてもそれはただの妄想である。妄想であるのだが、これが私個人の「マリア様がみてる」という物語であり、もし仮にここに原作者がやってきて「そうではない」と言い切ったとしても、私の「マリア様がみてる」は変わらない。あなたの「マリア様がみてる」と私の「マリア様がみてる」は同じではないかも知れないが、並存する事は許される筈である。

目次


次文書
福沢祐巳に対する評価(1):雌伏の時