カミーユが宇宙に上がってからもあまり冴えたカッティングは見られない。新主役モビルスーツ「Zガンダム」はテレビ版同様ウェイブライダー形態で登場し、そのままカミーユの危機を救ってアーガマに帰投するのだが、次に映った時には何の断りも無く人型になって突っ立っているのである。知らない人が観たら何が何やらと思うのではなかろうか。
「星を継ぐ者」で1カットだけ登場したマウアーもいつの間にやらジェリドとパートナーを組んでいる上、いきなり絶体絶命のジェリドを庇って死んでしまう。テレビ版通りの筋書きなのだが途中が全く描かれていない為に「あんた何しに来たの」状態だ。確かにジェリドという男は付き合う女を片っ端からカミーユに殺されて逆恨みして行く役回りだが、観客が知らない間に仲良くなっていた女に死なれては彼の滑稽さだけがいや増すだけである。
この後もサラの姦計、月面コロニー落とし、アームストロング広場のテロと色々なイベントが起こるのだがそれらが戦局にどういう影響を与えようとして画策されたのかがあまり説明されない為に、ドライブ感を著しく低下させる。月面コロニー落としは、どうしてそんな作戦をする必要があったのか全く思い出せない。
場面場面はどれも重要なシーンなのだが、それを一つの流れの中に組み込めなかった事で「恋人たち」はスクラップ帳のようなフィルムになってしまった。断片的な情報を時系列順に与えられ、なんとなくこんな事がありましたよと教えられただけの様な手触りである。確かにここを90分に纏めるのは無理があるだろうと思ってはいたのだが、なまじ「星を継ぐ者」が良く出来ていただけに残念だ。
(続く)