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フェティッシュの造形(ロシア美術との邂逅)

作成年月日
2008年01月16日 06:26

ここ最近ゲームをやってばかり居る様に書いているが、絵を描く事に割いている時間も相当な物である。”フェティッシュ”に関しては「漫画は何を表現しているのか−フェティッシュに関する考察−に色々と書いたが現在はその”自身のフェティッシュ”を再発見、再構築する事がテーマである。

漫画は確かに自身のフェティッシュが如実に現れるが、下手な内はそのフェティッシュが「本当に望んだ物」かどうかは怪しい。本当にこういう目が好きなのか、体のバランスはこれが一番だと思っているのか、腕の長さや指の形、髪の毛の処理。今現在俺が描く絵は100%フェティッシュを体現したものかと言えばそれは全然足りなくて「描ける絵で描いて」いたり「よくわからなくて誤魔化して」いたりする部分の方が遙かに多い、と気付かされたのである。「漫画の絵は物語を伝える為のツール」だと思っていた時ならそれでも良かったが、今はそうも行かない。普段描かないような絵をいっぱい描いたり自分のキャラを眺め回して気に入らない所を片っ端から修正したりしているのだが、これが結構キツイ。下手なギターと同じで「あっ、この音そんなに大きく弾くつもりじゃなかったのになぁ」ってなもんである。コントロールし切れていないので自分の望みと違う結果がそこここに出てしまうのだ。

そして漫画絵同様カラーの絵でも未だに四苦八苦しているのだが、普段良く行く喫茶店においてあった美術展のチラシをたまたま手にした事でこっちは随分楽になった(気がする)。チラシは「国立ロシア美術館展 ロシア絵画の真髄」と題されている。(実はチラシの方には「ロシア絵画の黄金時代」と書いてあるのだが、チラシを刷った後で変更されたのだろうか)。

この手の一枚絵に関して何の造詣も無い事は以前「一枚の繪」でも触れたが、そうであるが故に自身のフェティッシュを説明する事も自分で確認する事も非常に難しかった。頭の中には好みのコントラストやタッチなどがぼんやりとあるのだが、じゃあそれは具体的にはどういう物なのよ、と聞かれた時に具体例を挙げられなかったのである。「コントラストは高い方が好みだな」とか「ディテールは描き込む所はメチャメチャ描きこんでどうでもいい所は放ったらかし」「造形はリアルな方がいいんだけど筆跡は若干残ってる位のが好きだ。あぁ、でも印象派まで行っちゃうとボケすぎててダメだ」みたいな傾向は自覚していたのだが、それを明確に顕示するサンプルを持ち合わせていなかったのだ。

しかしこの「国立ロシア美術館展 ロシア絵画の真髄」と題されたチラシに載っている絵は、まさに俺の好みそのものである。イヴァン・クラムスコイ、イリヤ・レーピンあたりが特に気に入っている。またまた画像の無断使用だが、展覧会のホームページは展示が終わった後は消えそうなのでやってしまおう。展覧会とは関係ないのも混じっているが19世紀ロシアに誕生した”移動派”と呼ばれる絵描き達の作品である。

いや、本当に皆さんお上手でちょっと挫けそうにもなるけどこういう絵が描けるようになればいいんだ、描きたいんだと判っただけでも収穫だった。photoshopの作業時にこの画像群を周りに並べて、見劣りしなくなるまで描ければ良いだけの話なのだから、道筋は随分シンプル、明快にになったと言えるだろう。問題はその道筋が俺には険しすぎる事なのだが、真っ暗な道を手探りで進むよりかは随分精神衛生上マシだと思うし。

幸い近場(2008年1月24日〜 3月23日 東京富士美術館)に巡回が来るので、ちょっと出かけて来ようと思う。