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レビューの落とし穴(Xbox360周辺のあれこれその2)

作成年月日
2008年01月12日 22:03

実はその1よりも前の事になるのだが、「Stuntman:ignition」というゲームのデモ版をダウンロードしてみた所、とても面白かったので日本語版の発売を心待ちにしていた時の事である。通販で買う時の事を考えてamazonで値段をチェックしようと思ったらこの作品のカスタマーレビューが散々だったのだ。

カスタマーレビューとはページの閲覧者がその商品に評価点とコメントをつけて商品内容を勝手に補足してくれるという、とても有り難い機能である。某ゲーム雑誌のよいしょレビューと違い、こちらは基本的に金銭の授受やしがらみがないので皆平気で辛辣な意見を書き込む。「好き」か「嫌い」かという評価軸はあてに出来ない事が多いのだが、ゲームの場合は「仕様:システム」という評価しやすいベクトルが顕著に表れるので、ある程度のサンプル数が揃っていればそのゲームの輪郭が見えてくる。話がいい、とか、音楽がいい、というファクターは個人の趣味に帰結するが、「ロードが長い」や「回避や防御がない」「セーブポイントが少ない」といった評価は概ね事実に即している。ロードに何秒以上かかれば「長い」になるのかは個人の感覚に拠るが、そういう評価が多々見受けられれば、少なくとも「早くはない」という覚悟はしておいても良いと判断出来る。

そんな訳で随分と重宝するカスタマーレビューなのだが、この「Stuntman:ignition」では看過出来ない事態が発生していた。俺がそのページを見た時はレビューは僅か2件で、その両方ともが「星1つ」という物凄い酷評のされ方をしていた。曰く

等々。発売前の作品に対して、先にデモ版やアジア版をプレイした人間が揃って「ダメ出し」をしているとなれば未プレイの人間が見たら「これは地雷くさい」と警戒される事請け合いである。しかし同じく体験版をプレイした人間には彼らがどうして減点されているのか分かるのである。単に英語が分からないから何を指示されているのか分からないのだ。

「overtake」と言われて前を走る車の後ろから前方に矢印が出ていれば「あぁ、あの車を抜けば良いのだな」と思ってしまうのも仕方ない。これは実際は「横をすり抜けて、追い抜いた後はその車の前につける」という条件を満たさなければならない。その事はゲーム中にポーズを押してスタントマークの解説を読めば、中学程度の英語が分かれば理解出来るのだが、その解説ページの存在に気付かず延々「カァーット」と言われ続けているのだ。理不尽なペナルティがあるのは勿論ゲームとして失格なのだが、これを理不尽な物にしているのは自分自身なのである。

普段はカスタマーレビューなんて書かないのだが、さすがに黙って居られずそこの所を詳らかに書いた所、以降続々と「やってみた」「面白かった」という感想が続いた。おかげさまで現在「最も参考になったカスタマーレビュー」になっているのがちょっと嬉しかったりもするのだが、サンプルが集まりにくいマイナーなゲームでは、1人のレビューの影響力はとても大きい。デモ版をダウンロードして買うかどうか決められるのはとても有り難いのだが、ローカライズされていないデモ版を配信するのはこういうリスクも伴うのだな、と認識を新たにした。絶賛している俺ですら体験版のプレイだけを拠り所にしている訳で、日本語訳された製品版が体験版同様の仕様になっているかどうかは保証出来ない訳だし。

世界でも稀な程本体が売れていないこの国の為に体験版が出たら即ローカライズした物を作ってくれとはとても言えないのだが、日本語で簡単な概略やポイントを添付した方が余計な誤解も生まず、もう少し売り上げも伸びるんじゃないかと思った。