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恋人たち(スタートライン)

作成年月日
2006年02月27日 02:19

劇場版機動戦士ZガンダムU「恋人たち」視聴。大体予想通りの仕上がりだった。

冒頭ベルトーチカがアウドムラに合流するシーンは新規カットの描き起こし。映画の滑り出しに相応しい情報量だが根本的にシーンの重要性が低いのが実に勿体無い。シャアがワイヤーを引っ掛けアムロが受け止めるという、過去の仇敵が共同作業を行う所に注目すれば感慨深いシーンでもあるが、前回のラストであれだけ劇的な再会を果たした二人が、あっと言う間に肩を並べて走っているというのも初めて観た人からすれば肩透かしを食らったようなものだろう。(高揚感と妙に色気のあるいいシーンではあるのだが……)

シャトル打ち上げを阻止するべくやって来たブランとロザミアもあっと言う間に退場。これならブランは前回のラストで消えて貰ってても良かったなぁ……。脱出するロザミアをカミーユが目視するカットが残ったという事は3作目の出番があるという事か。そんな時間があるとは思えんが……。

このベルトーチカ登場からシャトル打ち上げまでの流れは、正直微妙だ。「恋人たち」で一番懸念していたのは実はこの辺である。大気圏離脱というのは本来大気圏突入と同じくらい盛り上がるイベントなのだがそれがこの「恋人たち」では前半に2度も行われてしまうのである。

富野氏は劇場版ターンAガンダムの時に、映画が2部構成だったのを利用して大胆な尺詰めを成功させている。前半で宇宙船を発掘する所までを描き、後半が始まるともう宇宙に行っていたのだ。テレビシリーズではその間に結構な話数が挟まっており、またいいエピソードもあったのだがそこを大胆に切った。映画が一旦リセットされる事でその間の事を観客に想像して貰えると予測した訳だが実際それはその通りであった。そんな大胆なカッティングを今回も期待していたのだが、蓋を開けてみるとそういう手段は採られていなかった。

「星を継ぐ者」のラストでブランに消えて貰い、ロザミアの目視を済ませ、ベルトーチカの出番を抹消すればシャトル攻防戦はカット出来た筈である。時間にすれば10分程度の尺だが、この短い時間にどうでもいいキャラが出たり死んだりするのが物語のフォーカスにとって邪魔になる。「星を継ぐ者」でシャアとアムロにいい所を全て持って行かれたカミーユが主役の面目躍如を果たす為に、この後に来るフォウとのエピソードの前に余計なエピソードを入れて欲しく無かった。

その望みはばっさりと断ち切られていたわけだが、しかしそれでも香港まで約10分。真面目にトレースするのなら最小限の手間で済ませたと言える。何はともあれこの「恋人たち」が成功するかどうかはこの後にかかっている。声優交代でも物議を醸したフォウ=ムラサメとカミーユ=ビダンのエピソードを固唾を呑んで待ち構えたのだった。

続く