先日、攻殻機動隊(S.A.C 2nd GIG)を鑑賞し終えたのだが、いやぁ、見事という他無い。徹底的にコントロールされた画面や、DVDの巻末に収録されている示唆に富んだスタッフインタビューを見れば、月2本の制作ペースや、おそらく普通のテレビアニメよりは少し多目の予算といった僅かなアドバンテージが帳消し以下になるくらいに、このスタッフが心血注いで作品を作り上げた事が想像できる。
それらの労力に対して現在の評価は、例え制作費を軽く回収できていたとしてもまるで釣り合わないと思うのだが(本来なら「冬のソナタ」の倍以上売れていなければ納得いかない)、内容の敷居の高さや専門用語の多さを考えれば、一般層に対するこれ以上のアピールは難しいだろう。
それでもこの作品は10年経っても小売店で正規に販売され続け、コンスタントにこの会社に利益を還元し続ける財産に成り得ると思うし、その利益の一部は同様に、原作者である士郎正宗という、これまた著しくコストパフォーマンスの悪い漫画家に流れて、彼の創作活動を助け続けるだろう。
海の物とも山の物とも分からない様な才能を擁護し続けた青心社という出版社が偉かったのかも知れないが、この作品をめぐるリレーは現在のところ、始まりから終わりまで誰一人手を抜く事無くバトンが渡され続けている。ネタが無いからと言ってちょっと売れてる漫画や昔凄く売れた漫画を安易に映像化して多方面の顰蹙を買うケースの多さを考えると、快哉をあげたくなるほどの出来事だ。
作品に対して出来るだけの事をすれば、相応のものを作品が返してくれるという事を証明してくれた事に心から感謝したいと思う。