皆さん、『義妹生活』観てますか。ある日いきなり兄妹になった高校生男子女子の、静かに危うく揺れる心の機微をしっとりした色合いとゆったり間を取ったコンテで描いているアニメです。妹モノが激減した今、こんなに真正面から兄妹モノを描いてくれてありがとう。
ただ今回はアニメの内容云々の話ではなく、割とどうでもいい話なんですがどうにも引っかかるというか、何故こうなってるんだろうという部分をですね、書き残しておこうと思います。その、妹の部屋にある（と思われる）水槽の事なんですが。
- 【作中何度も出て来る水槽】
コレ。このアニメ版『義妹生活』に於いては、水槽は割と重要な使われ方をしていて、妹が自室でモノローグを始める時はだいたいこの水槽が映ります。オープニングのラストカットにも顔を出すし、エンディング曲のタイトルは「水槽のブランコ」です。この作品全体を貫くキーアイテムと言ってもいいかも知れません。しかしこの水槽が映る度に私の頭の中にはひとつの疑問が湧き起こるのです。
このフィルターは何をやってるんだろう、と。
これはおそらくテトラのエアリフトフィルターを参考にして描かれた物だと思うんですが、他のメーカーからも似たような物は出ていまして、どれも仕組みは同じです。エアポンプから出た空気によってパイプ内の水が下から上に排出され、その過程で水槽内の不純物がスポンジで濾過されるという。
ところがこの水槽のコレは、上から水が出てたりはしないんですよ。そもそも空気が水を押し上げる力はそんなに強くないのであの程度のポンプではあんなに水面から離れた吐出口から水を出すのは難しいんですが。エアリフトフィルターが動作している様子は例えばこの動画（ジェックス GEX Aquarium チャンネル：2022メダカ元気 メダカを育てるフィルター）などを観れば分かりやすいかと。
じゃあこの妹が素人でパイプの長さをしくじってるのかなと言うとそれも違ってて、このフィルター、小さくて見えづらいですが下から泡が出てるんですね、スポンジの所から。
- 【パイプ下部から泡が出ている様子】
スポンジの色が黒じゃない時点でお気づきの方も居るかも知れませんが、これ、この部分はエアストーンだと思われてる訳です。ポンプから空気が送られて下からぶくぶく泡が出て来るアレ。横の機械（エアポンプ）が何かしてパイプの上から空気を吸い込んで、下のエアストーンから泡が出ていると、そういう仕組みだと解釈されてるように思われる。パイプの上が開いてたら空気が下から泡になって出て来るわけないんですが。
けれど、こういう間違いは通常大した問題じゃないと私は思ってる訳です。漫画やアニメでは描かなきゃいけない物はとても多く、その全ての使い方や構造を調べていたら身が持たない。モブの服や街中の標識、通りすがりのバイクのタイヤ、とりあえずそれっぽく見えれば十分、別にそれを描きたくて作品を作ってる訳では無いから。
ただ、この『義妹生活』に於いては、この水槽はかなり「意味を託して描かれている」モノであり、なんとなく画面が寂しいから入れときました、みたいなノリで背景美術が勝手に描いた物ではないと思うんですよ。そのくらい「使う気満々」なオブジェクトで、こんなことあり得るかなと。
更に、沢山の人間が携わるアニメ製作で、誰も気づかないなんてことあるかな、という点も気にかかります。昨今のコロナ禍を経て水槽を始めた人もそこそこ多いと思うので、スタッフの中に「あれ？」って思った人、絶対居たと思うんですよね。でも１話限りのミスではない、出て来る度にこの水槽のフィルターはずっと謎の泡を出している。
これは何が起きてるんだろう、ってちょっとぞわぞわするのです。誰か気付いても言えない雰囲気なのか、スケジュールがそれどころじゃないのか、言ったけどこれでいいと言われたのか、はたまた敢えて「あり得ない水槽」を映すことで何らかの意味を付与してるのか、ひょっとしてこの水槽はイマジナリー水槽なんじゃないか等々、色んな疑念が（まさに）泡のように立ち昇っては消えていきます。
アニメは面白くて毎週楽しみにしてるんですが、この水槽が映る度に私の心は掻き回されて、思わず溶存酸素量が上がってしまうのでした。