最近ちょいちょいskypeで外国人と喋っているのだけど、やはり発音も大事である。ベトナム人の話す英語と、こちら日本人の話す英語がかち合う時、そこは同じ単語なのに違う音が行き交う魔境と化し、簡単な文章が魔法発動時の呪文のような趣きを持つ。そうでなくとも元々日本語と英語の間には使われる音に隔たりがあるのだ。どうも「v」の音が苦手だとか、気を抜くと「th」が「s」になっちゃうとか、「squirrel」をまともに発音出来る日が来るとは思えねぇ、とか。そういう悩みは皆持っていると思うのだけど、人間、発音してる時は自分の声を客観的に聞けないので(絵やギターと同じだわね)、自分の声を録音して聴き返してみましょう、と、ここまではほぼ異論なく受け入れて貰えると思う。思うのだが、その為のツールが絶望的に無くて困っている。
こういう時、ICレコーダーやPCに録音して聴き返したり、なんならスマホで採点までしてくれる発音練習用のアプリを使うという線もあるのだけど、それらは「録音開始ボタンを押す」「録音停止ボタンを押す」「再生ボタンを押す」「場合によっては再生停止ボタンを押す」等のアクションを必要とし、目的の速度に届かないのである。目的の速度とは、例えば自分はギターを弾く時に遅めのディレイを使って
- 適当なフレーズを弾いて止める
- 弾いたフレーズがディレイで返って来る
- あぁ、あそこの所で別の弦が鳴ってるわ
- また弾いて止める
- 返って来る
- ちょっと良くなったけど後の方の音が綺麗に繋がってないわ
- また弾く
という練習をよくするのだが、こうすると二人の奏者が交互に同じフレーズを弾いてるような感じになる。これを発音練習でやりたいのだ。じゃあマイクをプリアンプに突っ込んでそこからギター用のエフェクタに繋いでそれのアウトをパソコンのinに繋いでヘッドフォンで聴けばいいですよね?と言われるかも知れないが、そういう煩わしい配線なしで出来ると思ったのである。きっと世の中には「パソコンに繋いだヘッドセットのマイク音声を指定された秒数後にディレイで返すフリーソフト」みたいな物がごろごろしているだろう、と。
ところが、ない。「カラオケエコー」とか「ボイスマジック」とか、一見出来そうなソフトはあるけれど、3〜5秒の長さでは返せない。自分の声が数秒後に1回聴こえればそれで十分なのに、それがサラッと出来ないという事に驚いた。なので、ここに「こういう機能のソフトなりアプリなりを作って欲しい」という要望を書き殴って、誰かがそれを作ってくれるのを待とうという作戦に出るのである。ちなみに同じ事を望む人は他にも居るようなのだが(参照:yahoo知恵袋「マイクの音をほぼリアルタイムでリピートして」)、ここに寄せられてる回答は多分意味を取り違えている。Audacityは録音された音声にエフェクトをかける事は出来るが、かけ録りは出来ないんじゃないだろうか。我々は(機械的には勿論内部で録音してるとしても)「録音」したいわけではないのだ。
とりあえず今考えてる理想のソフトを『オウムくん』と呼ぼう。(己のネーミングセンスの雑さに膝から崩れながら)『オウムくん』は以下の要件を満たす。
- ソフトを起動すると「通常モード」が立ち上がり、そこには「録音ボタン」や「再生ボタン」に相当する物はない。
- 「通常モード」は立ち上がった瞬間からマイク端子に入って来た音声をデジタルディレイでオウム返しする。
- ディレイ回数は1回である。
- ディレイタイムを調節するつまみが一番目立つ位置にあり、1秒から15秒くらいの範囲で指定できる。
- mp3やwav等の各種音声ファイルを「お手本ファイル」として再生する「お手本ファイルモード」がある。
- 「お手本ファイルモード」では、再生/停止ボタンが出現する。
- 「お手本ファイル」を再生する時は、そのファイルの秒数に数秒程度のマージンを足した秒数がディレイタイムに再設定され、リピート/次のファイルに移るまでの時間はそれを2倍した数が設定される。
- 上記の機能により「お手本ファイルが再生される」→「自分がそれを真似て喋る」→「自分の喋った声が再生される」→「またお手本ファイルが再生される」→「以下無限に続く」という状態を作る事が出来る。
- 「お手本ファイルモード」は1ファイルを延々リピートする。プレイリストのような形で複数ファイルを読み込ませた場合は「>」ボタンを押す事で次の音声ファイルに移動できる。勿論この時、ディレイタイム及び、再帰タイムはそのファイルの秒数から再計算、再設定される。
- 「お手本ファイルモード」から「通常モード」に戻った際は通常モードで最後に設定されていたディレイタイムに従う。
- 【お手本ファイルモード】
こんな所だろうか。「お手本ファイル」に使える音声は実はそんなに多くないのだが(英語参考書等の付録CDはトラック頭に章番号等の余分な事を言ったりするので)、それでも探せば色々ある。私のHDDには再生時間1秒程度の、ほんとうに1単語だけ喋っただけの音声ファイルが4,400個くらいあるし、例文であれば余分なアナウンスが付いていない物も結構あるだろう。そして、この「お手本ファイルモード」は、おそらくもっとも学習効率の高い方法になると期待できる。普通の「シャドーイング」は、お手本の音声は聞けても、それを真似た自分の声は(喋るのに夢中で客観的には)聞こえないのだ。「お手本の音声を聴き、それを真似て喋り、その自分の声を改めて聴く」というサイクルをリピートするのが発音を似せて行くのに一番確実だと思うのである。
需要あると思うのだけどなぁ。