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旧情報と新情報 『Forest 7th Edition』より

作成年月日
2016年07月22日 12:51

※この記事には、ある事情(参照:「間違った英語の話をしよう」)のもと、高い確率で間違った知識が含まれています。

未だにこまごまと納得行かない部分が多いので『Forest 7th Edition』という参考書を追加。とりあえず学校で習う程度の英文法を超整理して網羅した本である。これの編集・デザインをした人は凄い。「え、それどういうこと?」と思った瞬間、次の行に必ず例文を置いておく本文の細やかさもさることながら、膨大な情報を混乱することなく読み進められるよう配慮の限りを尽くした組版の威力も見事である。分からない事があったらこれを読んでね、というリファレンスではなく、最初から順に読み進めて行けば英文法の基礎が頭の中に構築されますよ、という装置のような佇まい。

その『Forest 7th Edition』のp.245にある「英語の情報構造」という短いコラムが、個人的に大ヒットであった。英文は基本的に「相手がすでに知っている事→相手がまだ知らない事」の順で並ぶというルール。ここの導入で触れられていた「I can't find my key.」の後に、「Well, your key is under my bag.」と来ることはあっても「My bag is on your key.」とは来ない理由(「鍵が見つからないよぅ」「僕のバッグは君の鍵の上にある」とは言わない。「鍵が見つからないよぅ」に対しては「君の鍵なら僕のバッグの下にあるよ」が正しい)。これが、長年私が引っかかっていた「There is」構文という物に座りのいい座布団を与えてくれたのである。

今まで「There is a cat.」みたいな文章が何故必要なのか分からなかったのだ。「I am here.」「My brother is in his room.」のように「A cat is there.」と言えば済むのではないかと。猫はそこに居るかも知れないが、「There」=「a cat」ではないだろう?しかも「There is ~」構文の後に「the ~」や「my ~」などの特定された名詞は取れないのだそうだ。「There is my brother.」とは言えない。どうしたmy brother、何故そこに居ない。

で、何故「There is my brother.」と言えないのかという事を考えた結果、これはつまり「古い(既出の)情報は左に、新しい情報を右に」という大原則を使って一続きの文章を遡って行くと、なるほどこうなるな、という結論に至ったのである。「旧情報→新情報」というのはつまりこういう流れだ。

こういう、しりとりみたいな流れ。

文の右側に新情報があり、それが次の文では左側に流れて行く。これを例えば次のように、無理矢理左右を入れ替えてみる。

妙な雰囲気はあるけれど、「んん?」って思っちゃうよねぇ。視聴者(読者)を正しく誘導する為の手管という意味では、フィルムや漫画のイマジナリーラインの話と似ている。で、また別の例、こんな話があったとする。

こんな風に、やはり「左に旧情報、右に新情報」の文章が並んでいたとして、一番最初の「猫がネズミを狙っていました」の、さらに一つ手前に文章を置くとしたら、「猫」はどこに行くのだろう?一つ手前なら、猫は「新情報(右側)」に位置する筈である。ここでアレの出番な訳だ。

「There was a cat.」

なるほどである。「a cat」を右側に置くとして、そしてこれ以上文章を上に追加しないのであれば、最初の文章の「左側」には価値のある新情報は何も置けない(ちょっと読者の意表をつきたいな、という時はもちろんそこにあえて突っ込むことで望んだ効果が得られるであろう)。「There is 」の次に来るのは「新情報」なので、「the」の出番はないと。そこは不定冠詞の場所なのだ。

あぁ、やっと「There is ~」のきしょさが払拭出来た。”「There is ~」は、「そこに〜があります」という意味です”、と言われても「はふん?」としか思えなかったが、要する漫画の1ページ目の1コマ目にロングの背景を入れるような気分なのだ。1コマ目にいきなり主人公の顔のアップを入れるのは特別な意図がある時だけである。それならそうと早く言ってちょうだいよ。