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止めてはいけない(もしかしたらヒアリングに効く心構え)

作成年月日
2016年07月11日 14:25

※この記事には、ある事情(参照:「間違った英語の話をしよう」)のもと、高い確率で間違った知識が含まれています。

とりあえず基本的な英文法は攫ったし、英単語もそこそこ覚えて来たのでちょいとBBCワールドニュースでも観てみるかと、スカパーでチャンネル合わせて音だけ聴いてみたら速い速い。全然ついて行けない。時々聞き取れる単語を頭の中で繋ぎ合わせて何言ってるかの想像はつくのだけど、今なんて言ったか書いてみましょう、と言われたらお手上げ。まだまだ先は長いなぁと溜息をついたりしたのだけど、その後ちょっと考え方を変えてみて、音だけ聴いてみようと思ってもう一度トライしてみるとなんという事だろう、「何を言ってるか理解しよう」として聴いていた時より遥かに聞き取れる。意味も少し遅れて頭の中に入って来る。

音だけ聴いてみよう、というのはつまり「何を言ってるのかは気にせず、聞こえて来た音をすぐさま物真似出来るように聞き取ろう」という意味である。今「all background」って言ったのかな?とか考えない。今なんて言いましたか?と聞かれて「オール・バックグラウンド」って言いました、とは言わない。「オーゥバッグアン」って言いましたと答える。そっくり物真似出来るように、音だけ聴く。オウムになる。そうすると、逆に何言ってるか分かる、ような気がする。

早口で出てくる単語を片っ端から特定するなんて無理なのだ。途中で聞き取れない単語が出た時に「今なんて言った??」って考えてる間に話はどんどん進んでいく。音を聴くのをやめたらそこで置いていかれる。音に置いて行かれなければ、意味は後からやってくる。

多分日本語を聴いている時も、相手が話している単語を逐一追ったりはしていないのだろう。どんなに両者が接近していようと、音が先で、理解は後なのだ。これは、演奏や、絵を描く時の状況に似ている。一か所弾き損ねたからと言って拍は待ってくれない。目が狭い部分にフォーカスしてしまうと、全体を捉え損ねてしまう。

以前は、英作文能力がヒアリングの要だと思っていた。相手の言う事をリアルタイムで予測して次の単語の候補を絞らないと、聞いてからそれを理解するのは無理なんじゃないかな、と。勿論それは大事なことだろうと今も思うし、今日のこの体験が今までやってきた学習抜きで成立するとは思えないので、(注1:ダニエル・スタイン言う所の「30本目のニンジン」である)「聴くだけでみるみる英語が話せるようになる」みたいなキャッチコピーは疑わしいと思っているのだけど、その「今までやって来たこと」を機能させる為にも耳を止めてはいけないのだ。その瞬間理解出来なくても、相手の声を、音を、ずーっと頭の中に入れ続けて行かなくてはいけない。理解する前の作業なのだから、そこに溜まって行くのは言葉ではなく「音」なのだ。

これまでの勉強はこれまで通り続けて、その替わりヒアリングの時は意識的に音に集中してみようと思う。もしそれをそっくり同じように物真似して喋ったら、自分にはどういう意味なのかさっぱり分からないが相手には何故か通じるという、そういう歪な特技を習得するつもりで、音を追ってみようと思う。

注1
「30本目のニンジン」:出典が別にあるのかどうかは知らないが、以前ダニエル・スタインのワークショップに参加した時に語ってくれた比喩である。天秤の片方の皿に錘を載せて、反対側の皿にニンジンを一本ずつ置いていく。2本3本4本とニンジンを追加して行っても天秤の傾きは一向に変わらず、29本目になっても相変わらず錘が載った皿は下がったままなのだけど、30本目のニンジンを載せた瞬間、にわかに錘を載せた皿は浮き上がり、天秤が水平になる。人の目にはまるでこの30本目のニンジンが何か特別な物に見えてしまうけれど、この30本目のニンジンが天秤を水平にする為には、それまでの29本の内どれかひとつが欠けてもいけないのである。(もしかしたら30本じゃなく20本のニンジンだったかも知れない。)