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保存からの解放『Quick Note』が素晴らしい

作成年月日
2016年06月29日 15:29

いや、似たような物はきっと他にもいっぱいあるのだろう。その中にはきっとこれより便利な物もあるのだ。単に私が「こんな物が欲しいな」と検索して最初に見つけたのがこのQuick Noteであり、私が必要とする機能が全てここにあったので他の物は探していないのだ。なので「(他のものに較べて)Quick Noteが素晴らしい」かどうかを、私は判断できない。しかし、今、これが激しく役に立っているというのは紛れもなく事実なのだ。Quick Noteが何かと言うと、つまりブラウザ上で動作するメモ帳(簡易テキストエディタ)である。

今月に入ってからアホみたいに記事を書けているのもこのQuick Noteのおかげなのだが、私が必要としていた機能は以下の2点。

たったこの2点である。この2点をクリアしているのなら私自身このQuick Noteにこだわる気もない。先に述べたように他の物を一切探していないのでこのままこのQuick Noteを例にとって話を進めるが、要するに「ブラウザの拡張機能で文章を書くのは楽だなぁ」という話である。

「保存」コマンドを必要としない

これが一番肝要である。テキストファイルに限らないが、私は常々この「名前を付けてファイルを保存」という作業が苦痛だった。文章・絵・漫画・曲、その他なんであれ、作り始めから完成までノンストップで済ませて、さぁ、保存、という風に作業を終えられる事は稀である。ほとんどのファイルは作ってる途中で一度以上保存しなければならない。中には書き始めたけどすぐに詰まってそのままというファイルもある。そんな時に「名前をつけろ」と言われても困るのだ。最終的にどんな物になるのか書いてるこっちもよく分かってないのだから。

考えてみるとファイル名というのは実に使い勝手の悪いものである。ファイル名は、内容の本質を表さない。曲ファイルに付ける名前は曲の内容を要約しづらいし、絵も厳しい。それを字で書けるくらいなら最初から絵の出番はない。徹底的に、或いは撤退気味に創作的試行錯誤を繰り返す作業において、こいつはまるっきり現状に付いて来られないのだ。ファイルの中身をガラッと書き換えても、ファイル名は変わらない。

そんなわけで「名前をつける」行為のハードルが高くてその手前で心折れる事が多く、書いた(描いた)けど保存するのも面倒くさいからそのまま閉じてしまった物も数えきれない。絵の方は落書き程度ならGyazoを駆使する事でそこそこ「保存」から解放されるので、とりあえずテキスト。テキストをもう少し楽に書き殴りたいと思い立って、見つけたのがこれ。

Quick Noteという、chrome上で動作するメモ帳である。

【Quick Noteスクリーンショット:左側に作成したメモの一覧、右側にエディタスペースがある】

このソフトというか拡張機能の偉いところは保存しなくていい所である。書いたものは自動的にインターネット上のどこかに保存される(セキュリティはどうなってるのかとかそういう事は調べてない)。「+」ボタンを押すだけで新規メモが作成されて、ノータイムで本文を書き始められる。好きなだけ書いて、やめたくなったら即タブを閉じて良い。次に開いた時、ちゃんと書いていた所から再開できる。「名前をつけて保存」という概念とおさらば出来るのだ。

しかし名前を付けないとどれがどれやら分からないのではないかと心配になるかも知れない。でも大丈夫。メモ帳上部にはタイトル欄があり、そこに「いつでも」タイトルを入れられる。タイトルが入ってない内は、本文の頭の部分が自動的にそこに挿入されるので、メモの一意性は保証されるし、何より本文の頭が書き換わればそこも自動的に変わるという点で、正しく内容を反映している。

この仕様の効果は劇的だった。どこに着地するか分からないまま書き始めて、好きな時にやめられるのだ。タスクは始めてしまえば半分終わったも同然と言うが、それはまさしく真実である。メモ一覧には締めの手前で詰まって寝かせている物、最後まで書き切った物、書き始めた瞬間気が抜けてそのまま閉じたもの等がひしめき、それらを1クリックで開くことが出来る。何故こんなに書けるかと言うと、書いた分以上のコストを一切かけていないからだ。物になるか、ならないかを見極められない内に「名前をつけて保存する」のは割に合わないのだ。

ブラウザ上で動作する

そして何より有り難いのが、このメモ帳がブラウザ上で動作する点である。専用ソフトを立ち上げる行為も書きもののハードルを上げる。「あ、」と思ってからソフトを立ち上げるのでは僅かに遅い。一瞬の思い付きはその時点ではソフトを立ち上げる労力と時間に見合わないのでついつい放ったらかしのまま忘れてしまったりもするが、Quick Noteならchrome右上の拡張機能アイコンを1クリックした瞬間、目の前に書きかけだった文書が表示され、左カラムにはメモ一覧が並ぶ。前回の続きを書くならトータル1クリック。今表示されているメモ一覧の中から選ぶなら2クリック。欄外を探す羽目になったとしても1クリック+スクロール+1クリックなのだ。それだけで、書き始められる。

私の場合、「PCが起動している」と「ブラウザが起動している」は限りなく同義なので(仕事中はgoogle画像検索で、仕事じゃない時はnetflixやdアニメストアで番組を観てという具合に、オン・オフどちらにせよブラウザは起動している)、メモを書くためにブラウザを立ち上げる、という手順はまず発生しない。PCが起動している=ブラウザが起動している=いつでも書く準備は整っている、という訳だ。

手軽に書き始められる事の効用は、書き終わりにも現れる。最近の記事を見て貰えれば分かるように、割と詰め切らないまま上げてしまう事が多いのだ。それはまずいんじゃないの?と思われるかも知れないし、実際まずいのだろうけど、ここは元々そういう文書の置き場所だったのだ。襟を正してテキストエディタを立ち上げて書いた記事はどうしてもちゃんとしなきゃいけない気がして、どうも書くハードルが上がっていた。なんとなく書き殴って、とりあえず適当に終わることが出来ればもうそれでいいやと再び思えるようになったのは、このQuick Noteのおかげである。

懸念としては、何かのトラブルでネットに繋がらなくなった時にお手上げ(実はつい先日ルーターの故障によりそういう目にあった)だとか、このサービスが終了したら丸ごと引っ越し作業をしなきゃならんのだよな、とか、常に自動保存されるので色々手を加えた後に「やっぱり前のが良かった」と思っても戻れないとか、そういうアレコレはあるけれど、それは現在私が手にしている利便性を脅かす程ではない。どうせネットに繋がらなかったらPC自体立ち上げないし、捗った分を鑑みれば、引っ越し作業などいくらでも繰り返せると思えるのだ。

今まで何十年もPCを使ってきて、一体いくつファイルに名前を付けて来ただろう。何千、何万というその機会が訪れる度に脳のリソースを割いて来た。そういうのは、もういい。名前を付けたり名前で探したりするゲームをやりたくてモニタに向かっている訳ではないのだ。