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アニメ1.5倍速視聴のススメ

作成年月日
2016年06月19日 00:00

以前とある大学の講師が、週20本のアニメ視聴をノルマにしておきながら自分は倍速で観ていた、という事が取り沙汰されていたのだが、それを読んだ時に「あぁ!その手があったか!」と思った。それまで毎期新しいアニメが始まる度にほぼ一通り観ながら「あ、これは無理だ」と早々に見切りをつけて森に返すという事を繰り返していたが、それは「費やす時間」に対して「得られる物(の見込み)」が割に合わなさそう、という状況が苦痛だから起こるのである。

だったら「費やす時間」を減らせばいいじゃん、と。

【dアニメストア再生ウィンドウにおける再生速度変更バー】

幸い現在契約しているdアニメストアというアニメ配信サービスには非常に優秀な再生速度変更機能が付いており(注1)、1.25倍程度ならまったく違和感なく、1.5倍まで上げても台詞を聴くのに不都合のない視聴が出来る。で、試しにそれで色々観てみると、意外や意外、「これは、これこそが相応しい速度なのでは?」と思わされる事が度々あった。つまり、ちょっと早送りの方がしっくり来る、という事だ。

アニメーションは、基本的に動かない。逆説的な物言いだが実際そうである。動かそうと思った物を、お金や人員を割いて「動いてるように作画して」初めて絵が動く。実写に較べて動いている部分は著しく少ない。だからこそ、カットの意図が際立つという利点を得られるのだが、それでも、それでいて登場人物の台詞が生み出すロジックの展開速度は実写のそれと変わらない(注2)。繰り返すが「間引く」というのは芸術である。フィクションの台詞だってハリウッドの効果音だって、邪魔な物はことごとく排除され、必要なものだけで物語を構成している。

けれど、様々な制約で、必要最低限なもので画面を賄っている事が多いのも事実である。そういう時、台詞のやりとりに宛がわれる時間は最低限の情報量で賄われた映像に対して少し多くなり、結果、台詞を待ってる間の絵がもたなくなる事が多い(注3)。1.25倍や1.5倍速度で圧縮すると、その差が目立たなくなるのである。1.5倍速ではさすがに速いが、1.25倍速で「ベストフィットなのでは?」と思わされるタイトルが意外なほど多かった。

そういうテクニカルな所を置いても、見続けるかどうか迷っているタイトルを気楽に見られるのは便利である。上手くすれば途中から面白くなるかも知れないし、そうなったら通常速度に切り替えれば良い。これは本来の視聴スタイルからすれば邪道であるし、製作者がフレーム単位で指定して切ったコンテとカットと音声のタイムシートを台無しにする行為だけれど、それでも「観ない」よりは断然マシな筈だ。アニメを観るなら本気で観なくてはならない、とか言う輩は無視して良い。1.5倍速で観るのもtwitterで実況しながら観るのも、視聴スタイルの本気度は変わらない。

これはちょっとどうかな、と思ったら1.5倍速にして、意外とイケると思えば1.25倍速に、ちゃんと観たいと思ったら等速にして観れば良いのだ。それで一本でもお気に入りのアニメが増えれば御の字ではないか。

注1
再生速度変更機能のみならず、前後両方向に備えた10秒/30秒スキップボタンのおかげで、雑な視聴がとても捗る。
注2
”実写のそれと変わらない”と書いたが、もしかしたら、アニメの台詞は一般的に少しゆっくり目に話されることが多いかもしれない。実写の台詞速度はどうか知らないが1.25倍で再生した音声の方が、「普段実生活で聴く日本語に近い」と感じられた。
注3
作る側が最低限のリソースでちゃんと成立させようとして速度の方を圧縮した「ギャグマンガ日和」や「てーきゅう」などが成功している所を見るに、この「情報量が時間に対して少し足りない」問題は今さら取り上げるまでもなく既知のものだと思われる。