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全力タイアップ(ロックマンエグゼ「Be Somewhere」)

作成年月日
2009年10月06日 02:12

最初に断っておくと自分は「ロックマン」と言うシリーズのゲームをただの一度もプレイした事が無く、アニメの方も全く未見である。今まで自分にとっての「ロックマン」というのは「『デッドライジング』でフランクが着替える事の出来るコスチュームの元ネタであり、さらにその作中で装備できる武器も、その元ネタの必殺技らしい」という程度にしか認識していなかった作品である。そんな人間が今から一体何を語る気なんだと訝しく思われるかも知れないが、我慢して読んで欲しい。

実はつい先日「太鼓の達人 とびっきり!アニメスペシャル」というゲームソフトを専用コントローラーごと買ってきた。出先にあるとついつい親子でやってしまうアーケードゲームの移植版である。このソフトは随分便利で、子供を河合やヤマハの音楽教室に通わせる予定の無い家庭には是非導入しておきたい一品だ。4/4拍子でいう所の1拍(4分音符)というのは1小節を4等分した長さであって、速い曲と遅い曲では1拍にかかる時間の長さは違うがそれでもそれはどちらも”1拍”なんだという事を、どんなに体系立てて説明しても理解してくれなかった6歳児が、このゲームのおかげでいつの間にやらその事を感覚的に理解してくれたのである。

そしてそのゲームに収録されていた曲の一つがタイトルにある「Be Somewhere」という曲で、なんでも「ロックマンエグゼ・ストリーム」というTVアニメのOPなのだという事も知った。そして更にここからしばらく酷い話が続くが、実はこの曲とそのプロモーションビデオに大ハマリしてしまったのである。またまたYouTubeからの引用になってしまうがご容赦願いたい。

色っぽいネーちゃん達がダンスしながら歌っているのだがこれがまさかの個人的メガヒット!メインボーカルのお姉さんの声の張りも素晴らしくBメロ担当のお姉さんもメインボーカルの声と違和感なく、周りのガヤの中にいるイントロでフロントに立っていたお姉さんがあちこちで「どや顔」をしているのが何故か脳裏から離れなかったりと、訳も分からぬままエライ気に入ってしまって朝から晩まで視聴しまくり、ついにamazonでCDを購入してしまうというオチまで付いた。

【メインボーカルのお姉さん】
【Bメロ担当のお姉さん】
【「どや顔」のお姉さん】

しかし洒落にならない位のヘビーローテーションを続けている内にちょっとした疑念が頭の中で芽生えて来たのである。「これ、本当にタイアップ?」

アニメの主題歌というのは本来その作品の為に作られた物である。昔はそうだった。歌詞の内容は作中のストーリーや固有名詞に触れ、曲調もその作品に相応しいと思われる物がディレクションされてきたのだがあれはいつ頃だろう、80年代かそこらから作品の要請を受けていない一般の歌手の宣伝場所としてアニメの主題歌が機能してしまい「るろうに剣心」の「そばかす」等の『ぅおいっ!なんだソレ』と叫びたくなる程場違いな歌が平然とオープニング面して画面から流れるようになってしまった。コレに対して曲が出来る前にオファーして「一応僕らの曲として作りますけど、なるべく作品に合うように気を遣いますよ」というスタンスの曲も勿論あるだろう。この場合は歌い手が一般の歌手というだけで、手順としては「アニメの主題歌」のやり方を踏襲している。ただ「なるべく」の度合いが作詞者や作曲者によってまちまちだ、というだけの話である。

で、この「Be Somewhere」はどうなのよ、という話なのだが、このPVを観れば観るほど「これは曲が出来る前に話が通っていて、なおかつ曲の制作サイドが本気で作品に寄り添ったんじゃないの?」と思えてしまうのである。歌詞は一人称が女性語りの「私」であるという1点を除けば、少年向けバトルアニメのオープニングとして完璧である。1番Aメロの不穏な描写といい、Bメロからサビまでに散りばめられた未来への疾走感といい、曲のタイトルである「答えはどこかにあるはず」というテーマといい、全く以って非の打ち所が無い。生活感を滲ませる単語を排除する事でちゃんとSFアニメの主題歌足りえている。

作曲編曲も文句無く、バトルアニメのオープニングならこれだろうという枠組みで進行する。基本的にD長調とB短調の平行調を行ったり来たりのカタルシス系だがAメロで一瞬D短調になったりと小技も効いている。しかしここまでならまだ「上手く行った方のタイアップかな」で済んだのだが、PVの3分06秒辺りから始まる間奏部分で驚愕の映像が展開。サビのリフレイン前のダンス部分で繰り返されるこの振り付け。

これはロックバスターのポーズなのでは?

俺も良くは知らないのだがロックマンの伝統技は下腕を砲身にした大砲の筈である。右拳を突き出す振り付けは珍しくもないのだが、なんかこう、腰を落として左右に身体を捻っている様子を見ると狙いを付けているんですよね?と思わずには居られない。この曲の振り付けを考えたのはMIKIKOさんというこれまた美人のお姉さんで、この人が「ロックマン」をプレイした事があったとも思えないので、もしこの振り付けが「ロックバスター」を模した物だとしたら、資料を読んだりそれまでのシリーズの映像を観たりして自発的に考えたものだという事になる。いくらなんでもCAPCOMやTV東京の人間が「PVのダンスにロックバスターのポーズを入れてください」とは言えないだろう。そんな風に考え出すと2番Bメロの「この街までもロックして」という歌詞も、恐らく本来の意味は「lockして」だと思うのだが、もう「ロックマン」に掛けたんじゃないのかとしか思えないのである。

作詞を担当した新藤晴一は「ポルノグラフィティ」というバンドのメンバーで、作曲・編曲の本間昭光はその「ポルノグラフィティ」の音楽プロデューサー。振り付けのMIKIKOは「Perfume」の振り付けとしても有名である。歌っているBuzyというユニットは既に解散してしまっているが、好き嫌いは別として日本音楽界で相当稼いでいる人達と綺麗なおネーちゃん達が全力で「ロックマン」に相応しい曲を作り上げたのだとしたら、それは随分と贅沢な話ではないだろうか。まるっきり俺の妄想という可能性も高い(注1)のだが、そういう風に考えていればちょっと幸せだなぁという、今日はそういうお話である。

ちなみに今日10月6日は娘の誕生日なのだが、そんな日にこんな話を書いてしまうのもどうなんだろう。

注1
CDとTVオープニングではマスタリングが違っており、この事だけとっても随分手間を掛けているという事だけは言える。