初日の予定はただホテルに向かうだけだったのだが、15時のチェックインまでただ無為に時間を過ごすのも勿体無いので、途中立川で降りて「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を観る事にした。出発1時間前の決定である。ここまでネタバレを回避する為にネット巡回では相当神経を使ってきたが、感想を書いていた人達もやはり相当神経を使って書いてくれていた様で、致命的なネタバレに遭遇することなく視聴の時を迎える事が出来たのは僥倖だった。なのでここでも重要なネタバレは避けてさらっとインプレッションを記す事にする。
いやぁ、面白かった。
話の大筋はTV版「新世紀エヴァンゲリオン」とそう変わっていないのだが、そのシノプシスを構成する場所や登場人物が変わる事により新鮮かつ、動機がより明快になっている。仮設5号機の登場シーンはその異様な容姿と、パイロットである真希波・マリ・イラストリアスのエキゾチックなキャラ立ちで作品の冒頭を飾るに相応しい導入だった。ネジが飛んだキャラを当てた時の坂本真綾はいつも素晴らしく、程好くコブシの効いた「三百六十五歩のマーチ」は必聴である。
そして悶絶なのは綾波レイと式波・アスカ・ラングレーの(今さら気付いたがヒロイン全員の苗字が「波」の字で終わっているのか……)萌えっぷりである。綾波はテレビ版や旧劇場版より遙かに表情とボキャブラリーが豊かになっており、アスカの方は加持には目もくれず最初からシンジ一筋である。二人がシンジの為に料理を練習するくだりはギャルゲーも裸足で逃げ出す破壊力だ。
潤沢に供給される戦闘シーンのスペクタクルに6歳の娘も飽きる暇がなく、この長丁場を最後までぐずらずに画面に釘付けになっていた事から、この「破」が普通の映画として良く出来ている事が伺える。何が何だか分からないがとりあえず凄いと納得してしまうパワーが、この画面にはある。勿論何が何だか分かっている人達も次から次へと繰り出される「旧作からの逸脱」シーンに度肝を抜かれっぱなしである。
まだ確定ではないが、この新劇場版は旧劇場版の後の話だと思っているので気楽に観られるという所も美味しい。上書きの作り直しだと削られたシーンや変更されたシーンに未練が残るのだが(新訳Zガンダムがいいサンプルである)もしこの新劇場版が俺の目論見通りの設定なら旧作は旧作で同一軸線上に存在するので、新たなキャラクター、構成し直された物語をお得に楽しめるのである。
最終章の「Q」の完成は随分気を長くして待たなくてはならないと思うが、この新劇場版が、そして恐らく「エヴァンゲリオン」という長大な物語がどう決着するのかとても楽しみである。