いつ消えるか分からない動画をhtmlの中に入れるのは不安だけれど、今日ばかりはご容赦頂きたい。ニコニコ動画にあった【本当にあった怖い画像】衝撃的な鬱画像集【絶望注意】という動画を観たショックは現物を引かなければ到底説明し得ないと思うのだ。
ちなみにこの【本当にあった怖い画像】という句はジョークである。動画はプロやアマチュアのイラストレーターによるオリジナル画像や二次創作画像のスライドショーになっており、テーマはズバリ”青春。そういう物に無縁だった輩や、今はもうそこから大分遠ざかってしまった年齢の者が怨嗟の声を上げるという意味での”衝撃的な鬱画像集”という手の込んだタイトル付けで、実際ニコニコ動画上では洒落なのかマジなのか分からないが多種多様な叫びがコメント欄に飛び交っている。青春真っ只中の年齢なのだけれどこんな青春は送ってねぇよという若者や、この頃に較べて今通っている大学はつまらねぇなと不平を漏らす成人、更にその上、遙か昔を懐かしむ中年などコメントを残す年齢層も様々だ。
で、当の自分はこの動画を見てどういう感想を持ったかと言うと、なんだかとてもしっとりとしてしまったのである。そこそこ愉快な高校生活を送り、今は愉快な家族に囲まれて楽しく暮している身としては悔しいとか羨ましいという感覚は無いが、かと言って呑気に懐かしいという感慨に浸る訳でもない。この画面に次々と映されていくフィクションの青春画像は40歳の目には確かに眩しく、軽い焦燥感の様な物も感じつつ、それでもあの頃に帰りたいとは毛ほども思わない。その時頭の中を巡っていたのは「あぁ、これだったのか」という、長い事探していた物の名前を思い出せたような満足感だった。
毎日毎日良く分からん事を考えて悶々としたり、文章をこねくり回したり、学校の面談に出かけたり、子供を育てたり、仕事をしたり遊んだり、そういう色々な作業の原動力というか動機に名前を付ける事が出来ずにここまで来たのだけれど、なんだかこの動画を観てすっと腑に落ちてしまった。要するにこういう光景が10年後も50年後も変わらず現実世界にあるように、俺は頑張るんだなと勝手に納得したのである。
なんのこっちゃら訳が判らんと思うが、俺は随分すっきりしてしまったよ。あっちの国でミサイルが発射されたりそっちの国で内戦が起こったりこっちの国で馬鹿みたいな法律が通ったりして、毎日毎日社会はその姿を変容させて、今どうなっているのか、これからどうなって行くのかを見極める事も出来ないんだけれど、そうやって右へ左へ触れ続ける針を見続けて目が回りそうになったらまたこの動画を観ようと思う。
俺が望む社会というのは、こういう非生産的で非効率的などうでもいい時間を、例え一瞬だとしてもなるべく多くの人が味わう事の出来る社会なのです。自分が味わった物を、未来に遺せないのは詐欺だと思うのです。