今日は子供の日という事で、こんな行楽係数マックスの時に出かけるのは普段のポリシーに反するのだがたまにはこういうのもいいか、と家族で出掛けてきた。メインイベントは公開終了間近の「ドラえもん のび太と緑の巨人伝」を観る事である。始まって15分位はいつものルーティン作業だったのだが、宇宙船が出てきた辺りから脚本完全崩壊。そこから終了時間まで目くるめく電波シャワータイムの連続である。5歳児の口から「早く終われ」と叩かれる位と言えばその凄まじさが分かって貰えるだろうか。
ビジュアルイメージやストーリーコンセプトは「劣化ナウシカ」、大事な事はすべて説教のつるべ打ちで語り、しかもそのどれもがそこまでの展開となんら関係ないところで決着してしまい、子供は置いてけぼり、大人は唖然という有様である。口で説明するのもまどろっこしいのでニコニコ動画に上がっているいわゆる上級者向けアニメってやつ集めてみた。という動画を観ていただければ良い。この動画に収録された数々の超展開アニメが霞んで見える程のイカレストーリーである。あまりに意味不明で途中寝かけたが、クライマックスで三宅裕司が大宇宙をバックに演説を始めた時には劇場の大音響をいい事に大声で笑い転げてしまった程だ。そういう意味では十分元が取れたと言えるだろう。ちなみにその時子供を挟んで二つ隣の席に座っていた女房は、怖くて俺の方を観る事が出来なかったそうである。
監督も脚本も素人ではないのにどうしてこんな事になってしまったのかさっぱり判らないが、随分と舐めた仕事をされたものだと憤りを感じない訳ではない。年に一度のドラえもんの劇場版を楽しみに足を運んで来た子供達に大の大人が知恵を絞って差し出したものがこれか?と思うと泣けてくる。宮崎駿の近作を俺は全然楽しめないのだが、それでもコレを観ると「あぁ、やっぱり宮崎駿は偉いなぁ」と思える。どんな結末に行っちゃおうがともかくそれは考えに考えて死ぬほど悩んでそこに落とす事にしたんだ、と信じられるという一点において、立派だと思うのだが、このドラえもんは「もうどうしていいか分かんないから適当に感動的なセリフを喋らせまくってそれっぽい体裁を整えてしまおう」という魂胆が透けて見えるどころかスクリーンにペンキで大書されている程の勢いである。
GWに公開される子供向け映画なんて手堅い作りばっかりで、観ても新味がないんだよなぁ等と思っていたが、その手堅い作りがこれほど恋しくなった映画も珍しい。DVDレンタルが始まったら旧作になるのを待って是非確認して欲しい。日本アニメの最底辺がここである。