人生何が起きるか分からないもので、まさか自分が車のゲームを嗜む日が来ようとは全く予想出来なかった。きっかけはXbox360の体験版ダウンロードでプレイした「スタントマン:イグニッション」だが、これが存外面白くちょっとムキになってやってしまった。そのままの勢いで「Test Drive Unlimited」の体験版もプレイ。こちらはハワイのオアフ島を舞台に自由にドライブするがいいさ、というゲームだと思っていたのだが、行ってみると世界各地から集まったDQNドライバーが体当たりを繰り返す無法地帯と化していて大変笑った。こういう手合いは現実でもゲームでもやる事は一緒なのだな。
車のゲームと一口に言っても「レースゲー」と呼ばれるジャンルは未だに全くダメである。購入したXbox360本体には「Forza motor sports 2」という、痛車を作れる事で随分と有名になってしまったソフトが同梱されていたのだが、こちらは何度やってもまともにコーナーを曲がれないので早々に投げた。これまで俺の中にあった「車のゲーム」というのは”車体の挙動をリアルに再現する”と謳っているこういうタイプであった。普通の乗用車で普通の運転しかした事の無い人間にはあの中を走っている車はとても運転出来ない。「えぇっ?なんでこの程度のRで滑っちゃうの?」と驚くのである。スピードメーターを見れば確かに結構な数字になっているのだが、自車を後方視点で見ているとそんなにスピードが出ている気がしない為に、道に沿って車を走らせる事すら出来ないのだ。正確なライン取りと正確なスピードコントロールが要求される非常にストイックなゲームである。
一方で「ドライブゲー」と言うのか言わないのか知らないが、俺がそう認識しているゲームの方は少々の暴挙は許してくれる。ハンドルを切ればテールスライドをしながらも取り合えず曲がってくれるのである。250km/hで走っていても運転の感覚は日常のドライブと大して変わらない。ちょっと減速してハンドルを切れば曲がり切ってくれるのである。俺が知っている”運転”というのはそういう物なので、こちらは短時間のプレイでコツが掴める。随分昔に「延々街中をドライブ出来るようなゲームが出来る様になればいいなぁ」と女房に話した事があったのだが、さすがは次世代ゲーム機、いつの間にかモニタの中で高解像度と大容量を武器に本当に街中を流しているような気分が楽しめる時代になっていたのだ。
そして例によって長い前フリになったが、現在絶賛プレイ中なのは「need for speed:most wanted」というちょっと昔に発売されたゲームである。ストリートレーサーという申し開き出来ない程の犯罪者である主人公が、自分を陥れたブラックリストナンバー1のレーサーに復讐するべく、並み居るレーサーに勝負を挑んでいくというシナリオまで用意されているのだが、謎のブロンド美女や主人公を目の仇にする凄腕警察官ドライバー等も登場し、お話としてもベタベタではあるが結構楽しめる。何よりブラックリストランカーを撃破する度に名声がじわじわと轟いていく有様が「エースコンバット6」で消化不良だったツボをピンポイントで突いて来てなんとも気持ちいい。
実写と見紛う程作り込まれた一都市をドライブするだけでも中々良い気分が楽しめるのだが、感心したのはシームレスなゲームシステムである。ランカーやそれ以外のドライバーとのレースは街中の到る所で行われるのだが、レース中だろうがただのドライブ中だろうがパトカーに見つかったら何とか振り切らないと逮捕されてしまうのである。例えレースに勝ってもその後警察に捕まったらアウト。(逮捕されても罰金を払うだけで済むのだが、3回捕まるとその車は没収されてしまう)。「お家に帰るまでが遠足です」という言葉が身に染みる程、このシステムはスリリングである。いつどこで警察に見咎められるか分からないというファクターがある為、車の色を塗り変えにショップに出かけるだけでも油断は出来ない。ハンドルを握っている間は常に「何が起きるか分からない」という有様である。
このゲームの警察は本当に容赦が無く、こちらのお尋ね者度が上がってくるとなりふり構わず止めに来る。10台以上のパトカーに追いかけられたり、真正面から突っ込んで来られたり、果てはヘリコプターが直接車を小突いて来たりして「ブルースブラザーズ」気分が満喫出来るのだが、その馬鹿騒ぎもさる事ながら、このランダムなイベント性がレースやそれ以外の用事を機械的にこなして行くだけのゲームにさせない所が見事である。腕さえ良ければランカーを1人も倒さずに”警察のお尋ね者ナンバー1”になる事だって出来るのだ。このゲーム性は他のゲーム製作者にも是非見習って貰いたい。戦闘機を勝手に飛ばすのは軍としてどうなんだという気もするが、「エースコンバット」でも与えられたミッションをただこなすだけではなく、オフタイムに他の基地に装備を受け取りに行ったり、勝手に敵の拠点を叩いてみたり、その帰り道で敵の凄腕エースに追いかけられたり、という事が自由に出来れば、随分とプレイの緊張感も増すのではないか。(もちろんそこで撃墜されちゃったらその機体は失われ、新しく機体を購入したり、旧式の戦闘機をあてがわれたりするのである。)
そんなわけで「エースコンバット6」の次のソフトが「車ゲー」とは誰も予想していなかったと思うが、幸いこのジャンルはアメリカではメジャーな様でまだまだ未開拓のソフトが控えている。我が家のXbox360は当分カーチェイス専用ゲーム機として活躍しそうである。