unlimited blue text archive

天国のピアニスト(羽田健太郎氏を偲んで)

作成年月日
2007年06月04日 23:34

余りにも突然。ピアニストの羽田健太郎氏がお亡くなりになったそうだ。普通の人には”題名のない音楽界21”の司会としてお馴染みであろうし、たいていのアニメファンなら「超時空要塞マクロス」の音楽の人と言えば通じるだろう。もう少し突っ込んだファンなら「伝説巨神イデオン」のサントラでピアノを弾いていた人と言えば感慨もひとしおなのではないだろうか。

当時小学生だった自分が初めて楽曲を”パート別”に認識するようになったのは、すぎやまこういち氏のスコアと共に、この羽田健太郎氏が弾いたご機嫌なピアノに拠る所も大きい。”発動”という曲の2:12位からかかるピアノソロが大好きで、そこだけ繰り返し何度も聴いたものだ。アンサンブルの中から一楽器のパートを耳で追って聴いたのは、多分この時が最初だったと思う。子供心に「いつかこの部分のピアノを弾けるようになれたらいいなぁ」と思ったりしていたのだが勿論その夢は未だ叶ってはいない。

「超時空要塞マクロス」のサントラは当時レコードで片っ端から買い揃えていた気がする。もうバルキリーが好きで好きでしょうがなかったのだが、それはメカデザインの河森正治や原画の板野一郎の功績だけではなく、その後ろでかかっていた羽田健太郎の音楽の力も大きかったのではないだろうか。バルキリーのカットを思い浮かべれば、そこには必ず「デゲデゲデッ……デーデ・デゲデゲデッ」という例のBGMが頭の中で鳴る位に、羽田健太郎の音楽が「超時空要塞マクロス」という作品を決定付けた部分は大きい。

享年58歳と言う早すぎる死を悼む人も多いと思うが、個人的には余り悲しい感じはしない。「本当に色々お世話になりました」と感謝の言葉を捧げたいだけである。氏がこの世にいなくても、「イデオン」や「マクロス」のサントラは我が家で繰り返し再生され、氏のピアノが鳴り止む事は無いのだから、悲しむ事など一つも無いのである。