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ロックの正体(第2段)

作成年月日
2007年03月28日 01:00

きっかけはギターの練習でお世話になっているギターにはまる!というサイトの中の記述だったのだが、その中の「ルーツへ帰ろう!!:Blues編【1】」において驚愕の内容を目にした事からこの一連の騒動が始まった。ここでコードの機能(トニック・サブドミナント・ドミナント)について解説している箇所があるのだが、その最中にこんな文章が紛れ込んでいたのである。

ブルースでは、I 、IV 、V 、に7thをつけるのが普通なので、以降は I 7、IV7、V7として解説していきます。
[例] Key Aで I 7=A7、IV7=D7、V7=E7

ちょっと待て!この引用部分の最初の方、ブルースでは、I 、IV 、V 、に7thをつけるのが普通なので……という部分までは「3和音じゃなくて第7音まで含めた7の和音を使うのだな」と思っていたのだが後半の、[例] Key Aで I 7=A7、IV7=D7、V7=E7という部分を読んで俺がどの位ひっくり返ったか判るだろうか。一瞬何かの誤植かと思った程である。

7の和音には幾つかの種類があって、長調のダイアトニックスケール上に発生する物は全部で4種類ある。例えばC長調で音階を一つ飛ばしに堆積して(ド・ミ・ソ・シやレ・ファ・ラ・ド等)7の和音を作って行くと以下の様になる。

3和音の種類コード表記根音から第7音までの音程最終的なコード表記
T長3和音C長7度Cmaj7
U短3和音Dm短7度Dm7
V短3和音Em短7度Em7
W長3和音F長7度Fmaj7
X長3和音G短7度G7
Y短3和音Am短7度Am7
Z減3和音Bdim短7度Bm7♭5

”最終的なコード表記”という列を上から見て貰えば判るが、一番左の文字(音名)を無視すれば

という4つの7thコードに集約され、さらに”□7”というパターンがたった一つしかない事が判って貰えるだろう。”長3和音+短7度”という組み合わせはX度(この場合は”ソ”)から始めた場合にしか発生せず、そうであるが故に調性感が明確になるのである。一時的にU度やV度等をこの”属7の和音”にする事はあるが、属7の和音はその特殊な響きによりT度に解決しようとするとても特殊で大切な和音である。”一つの調には□7は一つしかない”というのは調性を決定する上で余りに基本的な大前提なのだ。それがブルースでは、I 、IV 、V 、に7thをつけるのが普通なので、以降は I 7、IV7、V7として解説していきます。と言われてしまったのである。Key Aなら I 7=Amaj7、IV7=Dmaj7、V7=E7なんじゃねぇのか、という突っ込みを入れる間も無くそのページで提示されたブルースのコード進行例は目を疑うものであった。【1】もっとも基本的なブルース進行と書かれたそれは以下の様なコード進行だったのである。

A7D7A7A7
D7D7A7A7
E7D7A7E7

属7の和音しか鳴ってない……(泣)。これは何調の曲なんだろう。Aから始まってるからかろうじてA長調の様な気もするがこのコード譜から調性を読み取るのは不可能である。全てがドミナントで一度も解決しないまま曲が回っているように見える。読めない楽譜と格闘しながら勉強してきた機能和声がまったく通用しない未知の領域……ブルースってこんな恐ろしい物だったのか、と戦慄を覚えたのだが実は後になってそれはただの勘違いだったと判明する。実際に弾いてその種明かしをしつつ今回置き去りにした”ロックの正体”ににじり寄って行こう。

続く