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横幅崩し

作成年月日
2007年03月11日 12:59

なるべくならオピニオンにオピニオンを返すという事はやりたくない。誰かが「こう思った」と書いたhtml文書を取り上げて「いや、俺はこう思った」と言い出したらキリがないし、そうやって蓄積されていく意見交換にもそれなりに価値があるとは思うのだが、そういった文書が水掛け論式に増えていくとネットで何かを調べたい、参照したいと思った時に「人の意見ばっかりが検索結果に表示される」というノイジーな状況を招いてしまう。そういうのは掲示板やコメント機能でやればいいと思うのでこれまでこの記事に関しては触れてこなかったのだが、先日Operaの最新版(9.1)をダウンロードした際、驚愕の事実が発見されたので、ついでに今攫っておこうと思ったのだ。

件の記事というのは『一般人は常に「お気に入り」を表示している!』というエントリーで、一部を抜粋すると

最初の一人目は外部の人でマーケアドバイザー的なことをやってもらってる人。その人曰く「普通の人はお気に入りを表示した状態でみるから、このレイアウトじゃ駄目だよ」と。この人に指摘されたレイアウトっていうのは、いわゆる「3カラム固定」ってデザイン。これを最初聞いたとき、僕は冗談抜きで吹いた。この人何いってるんだろう、、まずお気に入りを常に表示する意味が判らないし、もしそういう奇特な人がいたとしても、サイドスクロールバーが表示されるから大丈夫じゃん、、って思った。

(中略)

その人も同じように「普通の人はお気に入り表示してるから、このレイアウトじゃまずいですよ…」と真顔で忠告してくれた。その人曰く、その人もその人の奥様も同じように思ったらしい。しかも最初にそのwebサイトを見たときから2週間、ずっと右端のカラムの存在に気づかなかったらしい!サイドスクロールバーとか見ないわけ??まじびびった。

普段サイドバーを畳んでいる人が、世間では案外出しっぱなしらしいという事を聞いて驚いていた、という話である。このエントリーに対して「出してる」「出してない」というコメントが寄せられ結構な盛り上がりを見せたのだが、この記事とコメント群自体が俺にとって物凄い衝撃だった。2カラムか3カラムかが問題なのではなく、サイトの横幅サイズを指定する事自体が問題だと思うんだが、結局そういう話の流れにはならなかった。その事に物凄い寂しさを感じたのである。

サイドスクロールバーが表示されるから大丈夫というのはブラウザの機能であって、htmlの仕業ではない。サイドスクロールバーを宛てにするのであれば、2カラムや3カラム、横幅指定自体をブラウザ(つまりユーザー側)にさせるべきである。手打ちのhtmlをブラウザ側で2カラムや3カラムにレンダリングし直す技術はまだないと思うが横幅指定は普通に行われている。ブラウザのウィンドウサイズがそれであり、ひいては閲覧者のモニタの解像度が「横幅指定」となる。ドキュメントを提供する側はなるべく相手に何かを強いるべきではない。携帯電話のディスプレイでネットを閲覧できる一方、横幅1920px以上のモニタが普通に売られている時代である。「横幅800pxが標準的なレイアウト」と言えなくなる日(勿論htmlはそんな事一度も言っていないのだが)はとっくに来ている。テーブルレイアウトという裏技から始まったこの”見栄え優先主義”が、サイドバーを出すか出さないかがトピックになる程にこの社会で市民権を得てしまっている事に寂寥感を感じたのだ。「どんな環境で閲覧されるか分からないんだから横幅指定なんかしなくてもいいんだよ、画面の端に行ったらブラウザが折り返してくれるんだからさ〜」という俺の声はここでも少数派なのだ。

自分でもちょっとびっくりするくらいにこのエントリーにはダメージを受け、それが故に今までこの記事には触れてこなかった。書けばいつもの様に「htmlとは……」みたいな鬱陶しい愚痴になる事が分かりきっていたので、そういう文書は残したくなかったのだが、RSSを試す為にダウンロードしたOpera 9.1がこの出来事を精算した。「ウィンドウ幅で表示」という機能である。

「ウィンドウ幅で表示」(ツール→設定→ウェブページタブ)という機能を有効にすると閲覧者のウィンドウ幅より大きい横幅を指定しているサイトであろうと、問答無用でウィンドウ内に収まるようにこのOperaがレンダリングの際に調整して折り返してくれるのである。素晴らしい。これならサイドバーを普段から出していようがいまいが関係ない。大きなモニタを使っている人はそれなりに、小さいデバイスを使っている人もサイドスクロール無しに画面を閲覧出来るのである。……って、それはサイトの横幅を指定しなければ今でも普通にそうなるんだけどなぁ。

この機能が一般化した時にwebデザイナーがどうするのか今からとても楽しみである。横幅を指定されない事の快適さに気付くのか、はたまたブラウザが勝手に折り返してくれるからと、ますます横幅を気前良く指定していくのか。多分後者の方なんだろうけど、それでも閲覧者の自由がひとつ勝ち取られた事は喜ばしい事だと言えるだろう。