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漫画と映画における最小単位の汎用性

作成年月日
2005年08月06日 03:29

引き続き漫画の話。この間テレビで映画の編集者にスポットを当てた番組(BBC制作のドキュメンタリー)をやっていた。カットの組み立てと言うのは漫画やアニメでは先に設定され、それに合わせて実際の作業が進行するのに対し、映画は一部のジャンルを除いて、撮影した素材を後から切ったり貼ったりしてストーリーを際立たせたり、場合によってはストーリーその物の意味を変えてしまったり出来る。

もちろん効率を考えるのならば先に何を撮るかを決めてしまって、必要な物だけを撮影するようにした方がいいのだが、この「200時間分のフィルムの中から2時間分のカットを抽出する」というシステムも確かに魅力的だ。たまたまだが、「ターンAガンダム」の時だったか「Zガンダム」の時だったかに監督の富野氏が「1年分のテレビシリーズを劇場版にまとめる事が難しいのではなく、本来映画はそれ位のバックボーンを持っていないと映画にならない」というような発言をしていた。

20分×50話で約16時間。200時間には遠く及ばないが、向こうはテイクの数だけ水増しされているのだから、1テイクに絞って繋げればこの差はだいぶ埋まるのかもしれない。この200時間分のバックボーンを漫画ではシナリオやプロットの段階で考える。フィルムの物理的なサイズはどのカットでも同じで、それ故に昔は文字通り「切ったり貼ったり」してカットを繋げたり省略したり、順序を入れ替えたりする事が出来たが、漫画のコマは大きさや縦横比率がまちまちで単純に「このコマの後に3ページ先のシーンを持ってこよう」という事が出来ない。これが痛いのだ。

その部分は描き直さなければならない上、右ページか左ページかで意味合いが変わって来る漫画では奇数ページ数のカットを行うとその後かなりの範囲を描き直さなくてはならなくなる為、だいたいの漫画家はネームの段階で作品の最終形が見えるところまで持っていく。ネームを描き直すのだって結構な手間だ。映画だってカットを繋ぐ為に撮影をやり直さなければならなかったとしたら、このやり方を真似るだろう。

最近の音楽ソフトはBPMやキーが違うwavファイルを、苦も無く任意のシーケンスに組み込めるようになった。漫画でも左右のパリティやコマの配置を意識せずに、シームレスに編集できるアプリケーションが出てくれれば喜ぶ人間はいっぱいいると思うんだがどこか出してくれないだろうか。