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喜びの形

作成年月日
2006年09月27日 11:24

我慢出来なくて描いてしまった。細かい所とかもう覚えてないのがショックだ。

初めて絵でお金を貰ったのは高校の文化祭。画用紙にポスターカラーでイデオンやナウシカを描いてその現物を展示販売した。500円くらいだったのかな、こんな素人が描いた絵に誰が金を払うんだと思っていたが世の中には色んな人がいるもので4枚の画用紙はあっと言う間に売約済みになった。 今考えるとそれは緩やかな著作権侵害なわけだが、その時の驚きは大変なものだった。俺の描いた絵を欲しいと思う人間がこの世に存在するのか、という驚き。

厳密に言うとその人達は俺の絵ではなく絵に描かれた「対象」の方に用があったのかも知れないが、500円も出せばオフィシャルなポスターが買えるのである。「アレ?もしかして、俺描いてもいいの?」 「小さい頃から絵が苦手で、ただ自分と周りの親しい友人の間で楽しむ為だけに描いてきたけど、もしかしてこの広い世界のどこかには俺の絵を欲しがってくれる人がいたりするのか?」

イデオンの絵を買って行ってくれたのは他校の女生徒だったような気がする。ガンドロワの上で片膝立ちでイデオンソードを突き立てるイデオン。ロボしか描いてないのにそれを女の子が買って行ったのが随分意外だった。そしてとても、嬉しかった。 文才の無さがそうさせるのか、いくらテキストで自分が考えている事を書いても、書き足りたと思える事は無かった。けれどこんなロボットの落描き一枚描いただけで俺は今、結構な達成感を味わっているのである。

それは錯覚なのかも知れないし、観る方には何も伝わらないのかも知れないが、「自分を記述した」という確かな感触が自分の中に残るのは何故なのだろう。こんな手段でしか自分を規定出来ないと言うのは、本当に何故なんだろうな。