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博覧強記(憂鬱と官能を教えた学校 第1段)

作成年月日
2006年08月25日 00:41

今回の帰省中に買ったおみやげ(自分用)の中で一番の拾い物は金沢の本屋で買った「憂鬱と官能を教えた学校 【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史」という本だ。バークリー音楽院という有名な音楽学校の教本をガイドにその学習メソッドの概要を駆け足で説明しつつ、音楽が世界の中でどう「発見」され、どういう変遷を辿って、今尚変容し続けているかという事を文字通り古今東西、天衣無縫に考察しまくった講義録である。

その昔、バークリーとは較べるべくも無いが、分倍河原にある音楽学院に赴き2年間位だったか音楽教育を受けた事がある。「楽器を習った事も無いし譜面も読めないけれど音楽という物がなんなのか分かるようになりたい」と門戸を叩いた自分が最初に教えられた授業は振動数の整数比に関する話だった。より正確に記すなら「調性の発見と変容の歴史」である。音階という物が自然界の物理法則と、それら秩序ある物を好ましく思う人間自身の内にある性癖から導き出されるものの、結局その手に入れた美しさを捨て、汎用性を求めて現在のドレミファソラシドになったという、とても刺激的な物語だ。

この本では導入でその辺りの話をきっちりと押さえつつ、さらに広範な範囲に考察の網を伸ばして、音楽がどこから来て、どこを通って、今どんな風になっているのかを超高速トークでまくし立てている。これら音楽概論と、これまた超高速で進むバークリー・メソッドの実技の解説が荒れ狂い、独特のテイストを醸し出している。

まだ読んでいる途中なのだが、クラシック和声で止まっていた自身の音楽観、肥大した音韻情報の氾濫が示唆する絵画との非親和性と、絵画の「絵韻情報」に対する考察など、色々考えさせられる事が多かった。とりあえず今回は本の紹介に留めて、各論に関しては後日アップする事にする。