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アンゴラの英雄(W杯第1段)

作成年月日
2006年05月31日 03:48

4年前のワールドカップで我が家が一番熱心に応援していたチームはアイルランドだった。何の予備知識も無かったが、辛抱強くひたむきでがむしゃらなプレイを見て胸が熱くなったのである。で、今回はどこを応援する事になるかなぁ、と考えていたのだが昨日(一昨日?)決定してしまった。アンゴラである。勿論NHKスペシャル「世界のスーパースター 〜祖国のために旋風を〜」を見たせいだ。

約30年に及ぶ内戦(例によってあの国のちょっかいのせいだが……)と、その果てに残された夥しい戦禍の中、やっと手にしたワールドカップへの切符。キャプテンのアクワの決意。この国の辿った歴史のせいでフィールドから出て行かざるを得なかった友人達や、初出場に歓喜する国民達の熱狂と期待が画面から溢れんばかりに綴られていた。

こういうのは我が家では反則である。コレを持って来られるともう抵抗できない。アクワのオーバーヘッド率も手伝ってアンゴラの英雄はそのまま我が家の英雄になった。

俺はどちらかと言うとチームフリークではなくゲームフリークなので、良いゲームを見せてくれるならどこが勝っても構わないというスタンスである。日本が勝つかどうかより、いいチームが駒を進めるかどうかが大事なのだが、やはり贔屓のチームの一つや二つは出来てしまうものだ。アンゴラの国情は今回参加国の中では恐らくトップクラスの悲惨さであろう。このチームが一つ勝ち進む毎に想像もつかない程の希望が、疲弊した国土を潤す事になるだろう。

けれどもスポーツの神様はそんな都合に耳を貸したりしない。「強いチームが必ず勝つ」とは限らないが、「勝たなければいけないチームが必ず勝つ」なんて事も起こらない。サッカーに費やしたもので評価するならば、ヨーロッパや南米の列強はアンゴラなど足元にも及ばない程の長い年月を練習や試合や育成に費して来た。彼らもまた途方も無い対価を払って、彼の地に立つのである。

一サッカーファンとしては、どこが勝っても文句はない。選手や観客がひどい怪我などに見舞われる事無く、無事に大会を終えてくれる事を祈る。フィールド上で生まれる瞬間の閃きと狡猾な戦術を一つでも多く見せてくれるチームに勝ち残って欲しい。けれども一個人としては、アンゴラが一つでも多く勝ち進む事、アンゴラの熱狂が一日でも長く、傷付いた国土を覆い続ける事を願おうと思う。

それにしてもあと10日なのかー。嬉しくて涙が出そうだ。